松下、新世代ユニフィエシステムLSIを45nmプロセスで開発
高機能・低消費電力LSIでユビキタスネットワークを牽引
新世代UniPhier(R)(ユニフィエ)システムLSIを45nmプロセスで開発
2007年6月より量産開始
【要旨】
松下電器産業株式会社は、当社独自のデジタル家電統合プラットフォームUniPhier(R)(ユニフィエ)[1] に次世代のAVデータ圧縮・伸長(コーデック)技術を搭載した、新世代タイプを開発し、さらにシステムLSIとしては初めて*)、45nm(ナノメートル)プロセスを用いて量産を開始します。これにより、民生分野でのデジタル機器間のネットワーク化が従来に比べ幅広くかつ容易に行えるようになるため、家庭内外のユビキタスネットワーク構築に貢献します。(*:2007年6月19日現在、当社調べ)
【効果】
UniPhier(R)は、すでに当社のデジタルAV機器に幅広く用いられています。今回の新世代UniPhier(R)では、画像データ処理をさらに高機能化するとともに、MPEG-2やH.264[2]等の画像データ圧縮規格に対応したAVコーデックを搭載しました。この結果、データ量の大きいハイビジョン画像データでも高画質を維持しつつ、従来比の1/2~1/3に圧縮したデータをネットワークに出力することができるため、スムーズな双方向通信を実現します。また45nm半導体プロセスを採用することにより、大規模システムで高機能なシステムLSIを、ワンチップかつ低消費電力駆動で実現しました。
【特長】
今回開発した新世代UniPhier(R)の特長は以下の通りです。
1. マルチ規格対応AVコーデックを搭載することにより、デジタル画像処理を高度化
2. 高品位ユーザーインターフェースを実現する高速グラフィックスエンジンとマルチプロセッサを搭載することにより、高度なデジタル機器連携をスムーズに実現
3. 45nm新世代半導体プロセスによる小型・低消費電力の実現
【内容】
本開発は、以下の技術により実現しました。
(1) 大画面でも高画質なフルHDを2画面同時に処理できるマルチデコード技術およびフルHD映像を従来比の1/2~1/3に高圧縮する高画質エンコード技術
(2) 高性能3Dグラフィックス処理技術およびセキュア対応の対称型マルチプロセッサ技術
(3) 2億5千万個のトランジスタを1つのLSIに集積するシステムLSI設計技術および45nm微細化半導体プロセス技術
【従来例】
フルHD画像はデータ量が非常に大きいため、複数の通信データがネットワーク中に混在する場合、これがデータ転送速度低下の一因となるため、ストレスのない動画を得るには多くの制限がありました。またフルHD対応のAVコーデックは、高度なアルゴリズムと高速処理が必要であるため、従来のSD品質に比べ約4倍以上の回路規模となり、従来の65nmプロセス技術ではLSIのチップサイズや消費電力が2倍以上になる課題がありました。
【特長の詳細説明】
1. マルチ規格対応AVコーデックを搭載することにより、デジタル画像処理を高度化
次世代AV圧縮・伸長技術であるH.264やMPEG-2など今後のデジタル家電で必要となる複数の規格に対応できるAVコーデックを搭載することで、さまざまなハイビジョン映像を高画質のまま視聴し、さらには機器間でネットワーク伝送することが可能になります。
2. 高品位ユーザーインターフェースを実現する高速グラフィックスエンジンとマルチプロセッサを搭載することにより、高度なデジタル機器連携をスムーズに実現
高品位で高速なユーザーインターフェースを実現するために、専用の3Dグラフィックスエンジンを搭載しております。さらに当社独自のマルチプロセッサにより、デジタル家電本体の機能と品質を保証しつつ、ネットワーク応用アプリケーションに柔軟に対応することが可能になります
(3) 45nm新世代半導体プロセスによる小型・低消費電力の実現
デジタルAV家電では、高機能をコンパクトかつ低消費電力で実現することが求められますが、世界初の45nm量産プロセスにより小型・低消費電力を実現します。
【内容の詳細説明】
(1) 大画面でも高画質なフルHDを2画面同時に処理できるマルチデコード技術およびフルHD映像を従来比の1/2~1/3に高圧縮する高画質エンコード技術
H.264、VC-1[3]、MPEG-2をはじめ、デジタル家電分野で必要とされる複数の画像データ圧縮規格に対応し、フルHD画像の2画面同時デコード処理が可能となります。
また、例えば、H.264規格に準拠したエンコード処理においては、絵柄に応じて圧縮パラメータを最適化する当社独自の高画質化アルゴリズムを用いることで、原画像の高品位を損なうことなく従来のMPEG-2方式と比べてデータサイズを概ね1/2~1/3に減らすことが可能になります。
(2) 高性能3Dグラフィックス処理技術およびセキュア対応の対称型マルチプロセッサ技術
3次元/曲面描画にも対応し、プロセッサとの処理分担を最適化した独自のグラフィックスエンジンを搭載、ユーザーインターフェースやネットワーク応用アプリケーション処理時にプロセッサの負荷を軽減します。縮小率に応じた可変タップフィルタを用いた高品質画像縮小機能やネットワークブラウザ・Javaアプリで用いられる画像ファイルの伸長機能などを提供します。
また、セキュア処理に対応し、同等なものとして扱うことができる複数のCPUを使って同時に処理を行うことができます。これにより、デジタル家電本体の機能と品質を保証しつつ、拡張アプリケーションの実行や複数コンテンツの高品質伝送を可能とします。
(3) 2億5千万個のトランジスタをワンチップに集積するシステムLSI設計技術および45nm微細化半導体プロセス技術
当社独自の垂直統合モデル開発で、機器セット部門と半導体部門の密連携によりLSIのターゲットを早期に明確化/最適化し、また「すり合わせ技術」により微細プロセスのスペックを共有化することで、世界初の45nmプロセスでの量産化を実現しました。
【用語の説明】
[1] UniPhier(R) (Universal Platform for High-quality Image Enhancing Revolution)
松下電器が各種AV機器に導入しているデジタル家電用の統合プラットフォーム。
独自開発のメディアプロセッサを中心とし、これにハードウェアとソフトウェアを統合したものです。
[2] H.264
2003年5月にITU(国際電気通信連合)によって勧告された、動画データの圧縮符号化方式に対する標準規格の一つです。従来広く用いられてきたMPEG-2と比較し、同程度の画質の場合、概ね1/2~1/3の符号量で圧縮符号化が可能です。
[3] VC-1
SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers) により規格化された画像データ圧縮規格で、Blu-ray Disc規格にも採用されています。