富士経済、バイオテクノロジー関連市場の実態調査結果を発表
バイオテクノロジー関連市場の調査を実施
メタンガス化プラントは2010年(予測)に180億円(2006年の3.5倍)
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、このほど、医療・医薬品、環境分野などで応用用途分野が拡大するバイオテクノロジー関連市場の調査を実施した。その結果を報告書「2007 Bio Technology関連市場実態総調査」にまとめた。
本報告書では、市場が顕在化している「バイオチップ関連」「バイオプラント関連」「バイオエコロジー関連」「バイオライフサイエンス関連」4分野の国内市場動向、参入企業の動向、技術動向を分析するとともに、併せて最新開発動向としてバイオテクノロジーと電子技術/ナノテクノロジーとの融合技術の研究開発動向を取り上げ「バイオエレクトロニクス関連」の現状を明らかにし、将来を展望した。
<調査結果の概要>
大きな市場の流れとして、エネルギー問題、環境問題からグリーンバイオ分野の拡大が期待され、単なる微生物の利用からゲノム情報を活用したものへとテクノロジーの進化が見込まれる。また、バイオテクノロジーとナノテクノロジーを融合したナノバイオや、バイオエレクトロニクス等、バイオテクノロジーが「使える技術」として、他の産業、技術分野から評価されるようになり、新たな市場を産み出しつつある。メインの用途である医療分野でもDNAチップの性能が向上しつつあり、テーラーメイド医療実現への一歩を踏み出している。バイオテクノロジーが活用されるシーンは多様化してきており、今後は医療、グリーン分野、エレクトロニクスの境界を越える動きが出てくるものと考えられ、それによって、バイオテクノロジー市場がさらに勢いを増し、活性化すると見込まれる。
※表は添付資料をご参照ください。
調査対象としたバイオテクノロジー市場は、2006年に前年比13%増の5,121億円となった。最大の市場は、バイオ野菜・穀物や抗体医薬/分子標的薬などを含むバイオライフサイエンス分野で、2006年は4,088億円であった。バイオチップ関連市場は、血糖値センサをコアに、DNAチップ、プロテインチップなどが市場を形成している。バイオプラント関連市場は、特にメタンガス化プラントが2010年には180億円(2006年比3.5倍)に達する見込みで堆肥化プラントやバイオ医薬プラントとともに重要な位置を占めると見られる。バイオエコロジー関連市場は、屋上緑化・壁面緑化や土壌浄化のバイオレメディエーション、生分解性プラスチックが市場を形成している。特にバイオディーゼルが注目されており、2010年には38億円(2006年比3.1倍)の市場が予測される。
現在顕在化していないが、新規市場としてバイオエタノールとバイオエレクトロニクスが注目される。
<注目市場>
●メタンガス化プラント
2006年 52億円 2010年(予測) 180億円(伸長率346%)
メタン菌の働きにより、生ゴミ等の有機性廃棄物や家畜の糞尿等を発酵させて得るメタンガスは、発電や自動車の燃料として利用可能である。廃棄物を焼却することなく処理できるため、地球温暖化防止につながる。発酵処理後に発生する残留固形分は堆肥(コンポスト)、乾燥汚泥、固形燃料(RDF)、炭化物等に資源化することが可能である。生ゴミから発生させるプラント、家畜等の糞尿・汚泥から発生させるプラント、生ゴミと糞尿・汚泥の両方から発生させるプラントの3種類のプラントがある。メタンガスプラントは、導入価格やランニングコストの高さからあまり普及が進まず、市場は縮小傾向にある。しかし、地球温暖化対策のための効果的な方法の一つとして、今後導入する自治体が増加すると予想される。地球環境に与える影響が少ないこと、処理後の残渣まで有効活用できることをアピールしていくことが市場拡大には必要である。また、生ゴミの発生量は多いが堆肥を利用するニーズが低い都市部と堆肥を利用する頻度が高い農業地域とでは堆肥のニーズに差があるため、企業と自治体が連携していくことも必要である。相互に連携しプラントを共同購入できれば、交付金の助成等と合わせて、イニシアルコストを引き下げることが可能である。豊作時に廃棄処理されることの多い野菜等の作物を廃棄処分せずに新たなエネルギーとして利用していくことも可能になる。
●バイオ医薬プラント
2006年 155億円 2010年(予測) 170億円(伸長率110%)
バイオ医薬プラントは微生物培養と細胞培養に分けられる。現在注目されている抗体医薬は遺伝子組換えによる細胞培養技術を用いたものである。バイオ医薬プラントは小型の数10万円の実験設備から大型の100億円を超える生産設備まで幅広い。2006年の市場は155億円で、微増推移している。バイオ医薬プラントの価格にはかなりの幅があり、数年かけて大型プラントを建設することがあるため、本報告書では、各社の完成ベースでの平均値から市場規模を算出した。医薬品製造の場合、日本では化学合成による製造が主流であるが、ここ数年、先行している欧米同様に培養原薬プラントに対する投資が徐々に始まっている。そのため、当該市場は今後も伸びていく見通しである。
現状では中型や大型のバイオプラント施設の場合、建設コストや維持コストが高額になりがちで、今後は設備コストの削減と容量当りの生産性向上が必要となってくる。海外の製薬業界では原薬の半数以上は培養技術を用いて製造されており、投資額も莫大なものとなっている。日本でもこの傾向が現れればバイオ医薬プラント市場はかなりの成長が見込まれる。抗体医薬を製造するには培養のための巨大なプラントが必要となり、バイオプラントに注目が集まっているため、新薬などがヒットすれば市場は急激に伸びると予測される。
●カイコ
2006年 3億円 2010年(予測) 4億円(伸長率133%)
たんぱく質を生産する方法としては、細菌類(大腸菌)、イースト菌、動物細胞、昆虫細胞(カイコなど)を用いたものがあるが、たんぱく質生成の中でカイコを用いたものを対象としている。主に医療用途向けである。
カイコは発育期間が短く、コストがかからないため、市場は順調に推移するものと見込まれる。2006年のたんぱく質受託生産市場は全体で約30億円であるが、そのうちカイコを用いたものは3億円強である。2004年まではニーズを探る段階であったが、2005年から市場が拡大している。
カイコの発現率は9割以上と他の発現系に比べて高く、複雑な構造のたんぱく質も活性可能である。現状では、他の発現系との競争になっているが、生産量や価格面からカイコに期待されている役割は大きい。カイコは部屋でも飼育が可能なため手軽であり、また、カイコを増やすだけで多くのたんぱく質を生産できる。このため、スペースや生産力調整の観点から今後もカイコを用いたたんぱく質の生産は注目を集める。カイコを用いたたんぱく質生産での抗体薬品は未だ承認を得ていないため、現状では研究開発の段階である。人体用に抗体医薬が発売されれば、市場の見通しはかなり明るいものとなる。特に、治療用モノクローナル抗体など安価で大量にタンパク質が必要とされる分野での成長が予想されるため、将来的にも市場の伸びが期待できる。カイコを用いたたんぱく質生産の需要が拡大した場合、衰退傾向にある養蚕事業そのものの維持に国をあげて取り組んでいくことが重要となってくる。
●バイオマスエタノール化プラント
2007年から2008年にかけて市場形成
バイオエタノール製造プラントは、実証試験用プラントの建設、もしくは実証試験の段階であり、市場は現在のところ形成されていない。しかし、エタノールを高効率で製造する技術が確立されつつあり、原料等のコスト低減によりバイオエタノールのニーズが高まり、製造プラント建設増加につながると考えられる。しかし、試験用プラントであっても建設に数十億円要するという試算から考えると、本格的な製造プラントを建設する場合、さらに費用が掛かる。実証プラントを製造プラントへとうまく活用し、イニシアルコストの削減につなげる必要がある。一方、コスト面で課題が残っている燃料電池の代替として、バイオエタノール等のバイオ燃料が期待されているため、バイオエタノールの需要が自動車等の燃料として増加し、市場拡大につながると考えられる。
バイオエタノールは実証試験の段階であるが、トヨタ自動車と日産自動車のガソリンエンジンが、E10(エタノール10%含有)燃料に対応していることから、今後は生産能力の増強が必要となってくる。このため、2007年から2008年にかけエタノール製造プラントの建設が増加すると予想され、これにより市場が形成されることも考えられる。そのため、製造プラントの建設だけでなく、燃料供給スタンド等のインフラの整備も同時に行なう必要がある。
バイオエタノールの原料としては、サトウキビやトウモロコシだけでなく廃材木、コメ等を原料として製造する技術が開発されている。世界的な石油代替燃料の需要の増加によって、サトウキビやトウモロコシの価格が高騰していることから、今後も廃材木等の食糧以外を原料とする製造が増加すると考えられる。さらに、従来よりも効率的にエタノールを回収する技術の開発が進められているため、今後は高効率でエタノールを回収することによる、製造面での低コスト化が期待される。
<調査対象>
▼バイオチップ:DNAチップ、ECAチップシステム、マイクロTAS、プロテインチップ、血糖値センサ
▼バイオエレクトロニクス:バイオLSI、バイオコンピュータ、ナノバイオセンサ、分子モータ、分子光メモリ、ナノバイオマシン
▼バイオプラント:堆肥化プラント、バイオマスエタノール化プラント、メタンガス化プラント、バイオ生ゴミ処理機、バクテリアリーチング、バイオ医薬プラント、マイクロバイオプラント
▼バイオエコロジー:バイオディーゼル、バイオ電池、バイオ水素、バイオエタノール、エタノール対応エンジン、生分解性プラスチック、生分解性繊維、生分解性潤滑油、生分解性インキ、バイオレメディエーション、屋上緑化・壁面緑化
▼バイオライフサイエンス:バイオ種子、バイオ花き、バイオ野菜・穀物、組み換えイネ、バイオ機能食品、米の品種鑑定、カイコ、抗体医薬、分子標的薬、再生皮膚、再生骨
<調査方法>
富士経済専門調査員による直接面接取材及び同社データベースの併用
<調査期間>
2007年1月~4月
以 上
資料タイトル:「2007 Bio Technology関連市場実態総調査」
体 裁 :A4判 216頁
価 格 :97,000円(税込み101,850円)
調査・編集 :富士経済大阪マーケティング本部 第二事業部
TEL:06-6228-2020 FAX:06-6228-2030
発 行 所 :株式会社 富士経済
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