ロシュ、関節リウマチ患者へのActemra単独療法が24週投与後の症状に有意な改善
Actemraについて
・国内では、関節リウマチおよび全身型若年性特発性関節炎の効能追加を2006年4月に申請しました。
・日本での効能・効果は「キャッスルマン病」、販売名は「アクテムラ(R)点滴静注用200」です。
関節リウマチ患者においてActemra単独療法により
統計学的に有意な臨床効果を示す
- 新規インターロイキン6受容体阻害剤を用いた4番目の第III相臨床試験において、主要評価項目が達成される
- 多国籍試験の結果は予定通り、2007年後半の規制当局への承認申請の資料となる
ロシュは本日、中等度から重症の関節リウマチ(RA)患者を対象とし、Actemra(tocilizumab)の有効性および安全性を示すことを目的とした試験AMBITION(注1)において、主要評価項目(注2)が達成されたことを発表しました。本試験は大規模な多国籍第III相臨床試験の4番目の試験であり、早期の患者を多く含む活動性RA患者を対象に、効果的な標準治療であるメトトレキサート(MTX)単独療法とActemra単独療法について比較検討しました。Actemra(8mg/kg)単独投与群ではMTX単独投与群に比べ、多くの患者で24週投与後の症状(ACRスコア(注3))に有意な改善が認められました。
ロシュ医薬品事業CEOのウィリアム・M・バーンズは、「本試験は日本以外で実施された多国籍第III相臨床試験のうち、Actemra単独療法での安全性と有効性が示された初めての試験で、これによりRAにおけるIL-6受容体阻害の役割が重視されます」と語り、また「これらの有望なデータにより、RA患者に対する将来の新たな治療法としてActemraの可能性が裏付けられます」と述べています。
本試験の結果と3種類の先行試験のデータは、本年後半に規制当局へ販売承認を申請する資料となります。
AMBITION試験について
AMBITION試験は、RA患者を対象に、MTXと比較して、Actemra(8mg/kg)の安全性と有効性を評価するためにデザインされた無作為化二重盲検プラセボ対照2群間比較試験です。各群には、4週に1回の静脈内Actemra(8mg/kg)+週1回のプラセボカプセル、または4週に1回のプラセボ静注+週1回のMTXが投与されました。本試験には673名の患者が参加し、米国を含む18カ国、252施設で実施されました。
先行試験および現在進行中の試験
AMBITION試験は、RAの新たな治療法としてActemraを評価するためにデザインされた第III相臨床試験5試験のうちの1つです。これらの第III相臨床試験のうちの3試験、OPTION(注4)、TOWARD(注5)、およびRADIATE(注6)は完了し、それぞれの主要評価項目が達成されたことは報告済みです。6月に開催されたEuropean Congress of Rheumatology(欧州リウマチ学会)年次総会において、OPTION試験の成績から、Actemra+MTX併用療法がMTX単独療法で効果不十分なRA患者の症状を有意に改善することが示されました。RAに対するActemraを評価する2年間の第III相試験、いわゆるLITHE試験が追加で現在進行中であり、結果は今後、2008年に報告される見込みです。AMBITION試験の成績は、今後開催される国際的な学術集会に提出されます。
Actemraについて
Actemra(tocilizumab)は、初めてのヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体であり、その独特の作用機序により、まだ完全な治療法が確立されていないRAという疾患に対して新たな治療の選択肢を提供するものです。多国籍臨床試験で観察されたActemraの総体的な安全性プロファイルは一貫しており、一般的に忍容性が高いことが示されました。最も多かった有害事象は、上気道感染症、頭痛、鼻咽頭炎、高血圧を含みます。また、他の生物学的な疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)と同様に、Actemra投与群において、重篤な感染症が報告されています。
ロシュと中外製薬は日本国外で共同開発を進めており、欧米を含む世界41カ国で4,000名以上のRA患者を対象に第III相臨床試験を実施しています。日本では2005年6月に世界初のキャッスルマン病治療薬として発売しました。また、2006年4月に、関節リウマチおよび全身型若年性特発性関節炎の追加適応症の申請を行いました。
関節リウマチについて
RAは進行・全身性の自己免疫疾患であり、関節内の細胞膜の慢性的な炎症や疲労および、骨粗鬆症や貧血、肺・皮膚・肝臓への諸影響をも引き起こす場合があることを特徴とします。炎症によって関節の形成や機能が損なわれ、痛み、こわばりや腫れが起こり、やがては骨・関節破壊により関節の機能が失われ、多くの場合、進行性の障害につながっていきます。さらに、慢性的な炎症が続くことにより主要な臓器機能へ影響が生じ、余命の短縮につながる場合もあります。RA発症後10年で、仕事や日常生活を支障なく継続できる患者の割合は50%以下とされており、世界中で2,100万人の患者がいるといわれています。
関節リウマチにおけるロシュについて
ロシュにとって今後数年間、最も有力な成長領域の一つに位置付けられているのが新たに発展している自己免疫疾患領域であり、RAはその最初の適応です。MabThera(rituximab)の上市に続き、いくつものプロジェクトが開発段階にあり、さらにこの領域を強化することを可能としています。MabTheraはRAの病因に重要な役割を持つB細胞を標的とした最初で唯一の治療薬です。また、Actemraは、ロシュにとって2番目の革新的な医薬品であり、RAにおける重要な炎症因子であるIL-6の活動を阻害する作用を持つ最初のヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体です。Actemraは中外製薬が共同研究により創製したものであり、ロシュは中外製薬と共に国際開発を進めています。その他、臨床第I、第II、第III相段階のものを含む複数のプロジェクトにより充実したパイプラインが形成されており、中でもヒト化抗CD-20抗体(ocrelizumab)は、RAを対象とした第III相臨床試験を開始しました。
ロシュについて
ロシュは、スイスのバーゼルに本社を置く、医薬品および診断薬領域における研究開発型の世界的ヘルスケア企業です。世界最大のバイオテクノロジー企業であり、疾病の早期発見、予防、診断、治療のための革新的製品やサービスのサプライヤーとして、人びとの健康とQOLの改善に多方面で貢献しています。診断薬事業、がんおよび移植領域の医薬品で世界第1位、ウイルス感染症領域ではマーケットリーダー、そして自己免疫疾患および炎症、代謝、中枢神経系などの主要な治療領域でも活躍しています。2006年度の売上は、医薬品事業では333億スイスフラン、診断薬事業では87億スイスフランでした。また、ロシュは世界各国に約75,000人の社員を擁し、多数のパートナー企業と研究開発契約や戦略的アライアンスを締結しており、ジェネンテックと中外製薬の株式の過半数を保有しています。ロシュ・グループに関するさらに詳しい情報は、 www.roche.com をご覧下さい。
本プレスリリースで使用あるいは言及したすべての商標は法律で保護されています。
追加情報
- ロシュと自己免疫疾患: www.roche.com/med_events_mb1106
参考:
注1.AMBITIONはActemra versus Methotrexate double-Blind Investigative Trial In mONotherapy trialの略です。
注2.投与開始24週目にACR20を達成した患者の割合。
注3.ACR反応率は、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)が提唱した、抗リウマチ療法に対する効果の判定に用いる標準的な評価基準です。患者には、疾患の症状と測定項目の数の減少率を明確にすることが求められます。例えば、20%、50%、70%の低下(RA症状の減少率)は、ACR20、ACR50、ACR70のように表します。現在の治療法では、ACR70は例外的で患者の病態が著しく改善したことを表します。
注4.OPTION はTOcilizumab Pivotal Trial in Methotrexate Inadequate respONders の略です。
注5.TOWARD はTocilizumab in cOmbination With traditional DMARD therapy の略です。
注6.RADIATE はResearch on Actemra Determining effIcacy after Anti-Tnf FailurEs の略です。