富士キメラ総研、ディスプレイデバイスとディスプレイ応用製品の世界市場調査結果を発表
世界の液晶関連 ディスプレイデバイス及び応用製品の市場を調査
LCD市場は年平均4.6%で成長し2012年に11兆円超
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 表 良吉 03-3664-5841)は、このほどディスプレイデバイスとディスプレイ応用製品の世界市場を調査した。その結果を報告書「2007 液晶関連市場の現状と将来展望 Vol.1」にまとめた。
本調査は液晶関連の市場について「ディスプレイデバイス及び応用製品」、「関連部材」、「参入メーカー動向」をテーマに3分冊で報告する。本報告書はその第一弾でTFT、STN、PDP、CDT、CPT、有機ELなど19分野34セグメントのディスプレイデバイスと、主要19セグメントのディスプレイ応用製品の世界市場について、大型化やワイド化、高精細化などの応用製品毎のトレンド、パネルメーカー別の用途別出荷量、納入関係の把握をポイントとし調査した。
※TFT:薄膜トランジスタ、STN:Super-twisted nematic display、PDP:プラズマディスプレイパネル、CDT:PCモニタ用ブラウン管、CPT:カラーテレビ用ブラウン管
<調査結果の概要>
■ディスプレイデバイス世界市場
2006年 前年比(%) 2012年予測 年平均成長率(%)
10兆4,609億円 111.1 13兆2,493億円 4.0
2006年におけるディスプレイデバイスの市場は、前年に引続き二桁成長となる11.1%増の10兆4,609億円に拡大した。純増で約1兆円増加しており、CDT/CPTの落ち込みをLCDがカバーしている。今後2008年をピークに拡大し、2010年以降成長率は低調となるが、年平均4.0%で成長し2012年には13兆2,493億円の市場が予測される。
LCDは携帯電話機などの中小型の応用製品(アプリケーション)でマイナスとなったが、TVで1.3兆円増加し、前年比1.1兆円増となった。用途はTVとPCモニタで6割以上のシェアを占めている。今後もこの2つの用途が主力と予測される。PDPはTVセットの低価格化に伴い需要が拡大し、金額ベースで前年の1.3倍の規模となった。30/40in(=インチ)クラスから50in以上への需要シフトが顕著となり30inクラスや42inWVGA(画素数800×480)は製品ラインアップの見直しの対象となっている。2007年も50in以上への需要シフトは進むが、2008年以降はそれに加えfull HD化も急速に進むと予測される。OLED(有機EL)は2006年も前年に引続きPM-OLED(パッシブマトリックス方式)中心の市場である。PM-OLEDのモノ/エリアカラーは携帯電話機サブ/メインディスプレイ、PMP(ポータブルオーディオ)、カーレーダ/ステレオ関連が市場を牽引している。PM-OLEDのフルカラーはTFT-LCDの大幅な低価格化も影響し、期待通りの市場拡大に至らなかった。AM-OLED(アクティブマトリックス方式)はPMPや携帯電話機メインディスプレイ用として本格的な普及が見え始めている。その他、2005年比で5%以上成長した市場は電子ペーパーと投射型LCOS(反射型液晶素子)である。
業界動向としては、LCDでシャープ、Samsung(SSE)の第10世代への投資や2007年前半におけるPCモニタ、32inTV用パネルの価格引き上げなどがあった。2006年のPDPは、各社とも生産工場・生産ラインの稼動が予定通り行われたが、2007年予定は各社とも遅れ気味で、中には着工延期となっているところもある。しかし、松下電器産業やSamsung SDI、LG電子など、今後も更なる生産増強を計画している。
<注目品目の動向>
◆電子ペーパー
2006年 前年比(%) 2012年予測 年平均成長率(%)
29億円 825.9 348億円 51.3
電子ペーパーは、紙の長所とされる視認性や携帯性を保った表示媒体のうち、表示内容を電気的に書き換えることができる超薄型のディスプレイで、本項ではペーパーライクディスプレイを対象としている。
現在、最も商用化が進んでいるのは電子書籍の分野であり、複数のメーカーが既に市場参入している。また、携帯電話機や値札/棚札などに商用化されている。
2006年の電子ペーパー市場は前年比825.9%の29億円となった。電子書籍の「Sony Reader」が9月に米国で発売され、11月にはMotorolaから、携帯電話機のディスプレイに電子ペーパーを使用した「Motofone F3」が発売されるなど製品市場において大きな動きが見られた。特に「Motofone F3」は2007年6月時点で累計販売台数が約1千万台となり、2007年以降の電子ペーパーの市場に大きな影響を与えると見られる。また、「Sony Reader」も2004年に日本で発売された姉妹機である「リブリエ」の15~20倍の売れ行きを示している。電子書籍は中国や欧州でも好調に推移している。
今後は新規の応用製品の立ち上りが期待されるとともに、既存の応用製品でも続々と新製品が登場すると予想される。2007年内にはセイコーウォッチから腕時計※の第二弾が発売される予定である。電子書籍については、ワールドワイドで徐々に普及が始まっており、2008年にはAmazon(米国)を含む5社程度の参入が予定されている。また、同年にフランスの経済紙Les Echosが電子新聞のスタートを予定している。その他、カードの残高表示などに電子ペーパーを使用したいというニーズや情報表示装置では、災害時の案内板として期待されているほか携帯電話機などと連動させたサービスを考えるメーカーもある。2007年、2008年は高成長を示し、以降ややその伸びは落ち着くが、2012年には348億円の市場が予測される。
※腕時計:チタンをベースに電子ペーパーの曲げられる特徴を生かしほぼ前面をディスプレイとしている
◆LCD(液晶ディスプレイ)
2006年 前年比(%) 2012年予測 年平均成長率(%)
8兆4,874億円 115.6 11兆867億円 4.6
LCD市場はa-Si TFT(アモルファスシリコン)、LTPS TFT(低温ポリシリコン、CGシリコン含む)、HPS TFT(高温ポリシリコン)、STN、TNで構成される。2006年はTV需要が好調で前年比15.6%増の8兆4,874億円に拡大した。このLCD市場の94%を占め、主力デバイスになっているのがTFT(a-SiとLTPSの合計)で、前年比20.2%増の7兆9,391億円に拡大した。10in以上のa-Si TFTでは出荷数量ベースのシェアでLG.Philips、SSE、AUO(台湾)が上位を占め、10in未満ではシャープ、東芝松下ディスプレイテクノロジー、エプソンイメージングの順となっている。また、主要生産拠点は10in以上が台湾と韓国で、各々全生産量の40%以上を占め、日本での生産は5.9%まで低下している。10in未満では日系メーカーが強いことから日本が50%弱の生産量を占めている。
今後は主要用途であるTVではCRT-TVからの代替需要は飽和、携帯電話機でも世界的な普及率の上昇により、数量ベースの伸びは鈍化していく。また、パネルの平均単価も下落し続けており、金額ベースでも2008年には10%の伸びを示すが、2010年以降は1%台となり、2012年には11兆円と予測される。
◆Color PDP(カラー プラズマディスプレイ)
2006年 前年比(%) 2012年予測 年平均成長率(%)
8,797億円 133.1 1兆5,529億円 9.9
2006年のColor PDPの出荷数量は30/40inクラスが前年の1.3倍と以前よりも穏やかな成長になったのとは逆に、50in以上は2.6倍超となった。一方、平均単価の下落率は30/40inクラスで年率13~14%、50~60inでは25~35%となり、需要が30/40inクラスから50in以上へシフトしたが、50in以上のボリューム増大が強く、市場は8,797億円(前年比33.1%増)と高成長となった。
2006年のシェア上位メーカーは松下電器産業、LG電子、Samsung SDIの順となっているが、LG電子は2006年の後半から40inクラスをはじめとする販売不振が影響し、2007年にはSamsung SDIとの順位が入れ替わると予測される。地域別の生産量は韓国が54%を占め、松下電器産業の生産増強で前年より2.4ポイント増加した日本が44%を占めている。
今後はLCDの大型化が進むことで、30inクラスは2008年以降、40inクラスでは2011年以降に数量ベースでマイナス成長となるが、全サイズトータルでは増加推移が予測される。また、Full HD化により、60in以上が2007年、40/50inクラスが2008年頃に平均単価上昇、あるいは下落の緩和が予測され、それまでは高い伸びを示すが、2009年以降その伸びは急激に減速し、2012年には1兆5,529億円と予測される。
◆OLED(有機ELディスプレイ)
2006年 前年比(%) 2012年予測 年平均成長率(%)
568億円 125.1 2,164億円 24.8
2006年のOLED市場は数量ベースで前年比39.9%増の7,265万枚、金額ベースで前年比25.1%増の568億円となった。OLEDは駆動方式によりAM式とPM式があり、市場の大部分はPM式が占めている。携帯電話機サブディスプレイやPMP向けのPM-OLEDのエリア/モノカラーを主力とするRiT display(台湾)がSamsung SDIを僅差でかわしトップシェアを獲得している。Samsung SDIはPM-OLEDのエリア/モノカラーでは携帯電話機やPMP向けが堅調であったが、PM-OLEDのフルカラーの減少が影響した。
2006年のAM-OLEDは、PMPや京セラの携帯電話機など、ボリュームゾーンをターゲットにしたモデルの投入が相次いだ。AM-OLEDのメインターゲットは携帯電話機であるが、低価格化とスペックが向上したTFT-LCDとの優位性を出せるかが課題となる。一方、2007年中にソニーからTVが発売される可能性があり、市場評価が得られれば、AM-OLEDの大型パネルの量産が期待される。
PM-OLEDは携帯電話機サブディスプレイとPMPといった応用製品が市場を牽引しているが、これらのスケールアップにより、2006年の市場は拡大した。PM-OLEDパネル投入当初から実績のあるカーステレオ向けも、ハイエンドクラスでの搭載が中心であったが、パネルの低価格化が進んだことにより、ミドルエンドクラスの製品にも採用が進んでいる。日本国内の車載関連向けではカーレーダ探知機やカーセキュリティ用で採用が進んでいる。2009年頃からは車載用パネルへの採用が始まる可能性もあり、需要拡大が期待される。2010年までは10%前後で成長するが、2011年以降は更に高成長が予測される。
<応用製品の動向>
ディスプレイ応用製品の市場拡大は、ディスプレイデバイスの需要拡大につながる。応用製品への期待度を、完成品メーカーからの出荷数量の年平均成長率(2006年実績から2012年予測)でみると、LCD-TVが21.1%と最も高く、次いでPDP-TVが18.2%、PDA/PNDが16.9%、ノートパソコンが16.5%となった。逆に年平均成長率がマイナスとなるのがCRTモニタ(-27.0%)、CRT-TV(-21.3%)、リアプロジェクションTV(-11.0%)、パチンコ、パチスロ、携帯ゲーム機、カーオーディオである。
<調査対象>
1)ディスプレイデバイス TFT、STN、PDP、CDT、CPT、有機EL等19分野34セグメント
2)ディスプレイ応用機器 主要19セグメント
<調査方法>
富士キメラ総研専門調査員によるヒアリング調査及び関連文献、社内データベースを併用
<調査期間>
2007年4月~6月
以上
資料タイトル:「2007 液晶関連市場の現状と将来展望 Vol.1」
体 裁:A4判 400頁
価 格:95,000円(税込み99,750円)
調査・編集:株式会社 富士キメラ総研 研究開発本部 第一研究開発部門
TEL:03-3664-5841 FAX:03-3661-7696
発行所:株式会社 富士キメラ総研
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