島津製作所、DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置を発売
アガロースゲル電気泳動の完全自動化と
ランニングコスト1/4以下を実現したマイクロチップ電気泳動装置を発売
島津製作所は、アガロースゲル電気泳動*を高速全自動化し、さらにランニングコストの低減を実現したDNA/RNA分析用マイクロチップ 電気泳動(*)装置 MCE-202“MultiNA”(マルチナ)を発売します。(発売日2007年8月27日)
新製品は、ランニングコストにおいてアガロースゲル 電気泳動法(*)と同等以下、同クラスのマイクロチップ電気泳動装置の1/4以下を実現しました。また、前処理、分離、検出、データ化など手作業で行っていた作業を完全自動化し、最大120回まで迅速、簡単、確実にDNA/RNAの分離サイズ(長さ)を分析できる装置を提供することにより研究を支援します。なお、本製品は8月29日から31日まで千葉市・幕張メッセで開催される2007分析展に出展します。
(*)アガロースゲル電気泳動:
核酸(DNA/RNA)は緩衝液などに溶解するとマイナスに荷電します。この溶液をアガロース(寒天の主成分の一種)ゲルに添加して電気泳動すると、核酸の分子量に応じて移動します。これを蛍光物質で染色して核酸の電気泳動パターンを得ます。このパターンから分子量や固体 識別のための情報が得られます。
(*)マイクロチップ電気泳動:
ガラスやプラスチック基板に溝を微細加工したデバイスを用いて、対象物質を電気泳動分離する方法がマイクロチップ電気泳動法。高速・微量分析という優れた特長を持ち、次世代の技術としてライフサイエンス分野で応用されています。
【新製品開発の背景】
DNAやRNAの核酸試料の前処理工程では、試料サイズ(長さ)の確認やおおまかな定量が必ず行われています。その確認には、アガロースゲル電気泳動装置が最も多く利用され、次にアガロースゲル電気泳動をマイクロチップ化したマイクロチップ電気泳動装置が使われています。
アガロースゲル電気泳動装置が、ゲル作成からデータ処理までの6工程各々に個別の器具を用いて手作業で行うのに対して、マイクロチップ電気泳動装置はその6工程を1台でこなす簡便さが受けて、粗い分析性能ながら手早く試料のサイズを確認する用途で使用されています。しかしながら、マイクロチップ 電気泳動装置はランニングコストが割高なため、ニーズは高まっているもののアガロースゲル電気泳動装置からマイクロチップ電気泳動装置への移行は緩やかとなっています。
そこで当社は、再利用できるマイクロチップを開発することで、アガロースゲル電気泳動と同等以下のランニングコストの低減を実現しました。また、分離サイズ(長さ)に応じた試薬をキット化することにより、簡便な操作性で高い分離能と再現性を確保しながら、高速で全自動分析ができる製品を開発しました。
新製品の特長をまとめると次の通りです。
・ランニングコストの低減を実現
繰返し利用可能なマイクロチップを自社開発し、分離サイズ(長さ)に応じた試薬をキット化することにより、例えば、本製品でのDNA分析は25円以下/試料分析となり、アガロースゲル電気泳動(28円~76円/試料分析)と同等以下、同クラスのマイクロチップ 電気泳動装置の1/4以下のランニングコストを実現しました。(標準価格情報に基づく、当社調査による算出比較)
・最大120回の分析まで高速全自動化を実現、しかも1試料からでも無駄なく自動分析が可能
新製品は最大120回の分析登録ができ、完全自動で分析できます。しかも、これまで同クラスの装置では対応できなかった1試料からでも無駄なく自動分析することができます。試薬は設定された分量を自動で注入していきますので、貴重な試料(最小必要量2μL)や高価な試薬の微量化ができるとともに、操作ミスによる試薬の無駄や使用者によるデータのバラツキを防止できます。
・短い分離流路のマイクロチップ ながら、高い分離性能と再現性を確保
分析するDNA/RNA試料のサイズレンジに応じて、4種のキットの中から最適なキットを選択できます。低分子量および高分子量の2つの内部マーカを試料と一緒に泳動することにより、電気泳動法が抱えるバラツキを補正し、高い分析性能と再現性を実現しました。
・迅速・簡便な操作性を徹底的に追求
分析スケジュールを作成すれば、試料と試薬をセットしスタートボタンをクリックするだけです。あとは装置がマイクロチップの洗浄、分離バッファの充填、試料の導入、電気泳動分離からデータ解析まで全ての工程を完全自動で行います。また、分析スケジュール作成を簡単に行うツールとしてサポート機能を多数搭載しました。
【新製品の概要】
名称 : DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置 MCE-202 “MultiNA”
発売 : 2007年8月27日
本体価格 : 398万円(税抜、標準付属品にソフトウェア含む)
販売目標 : 国内外で2009年度までに400台以上
本体寸法 : W415 × D545× H508(mm)、43kg