富士フイルム、全自動でSNPs検査が可能な「迅速遺伝子検査システム」を開発
世界初、全自動でSNPs検査が可能な
「迅速遺伝子検査システム」を開発
最新の遺伝子等温増幅手法(SMAP)を採用
富士フイルム株式会社(社長:古森 重隆)は、1滴の血液(数μL)から、体質の個人差を決定づける遺伝子(SNPs)の検査*1を、全工程30分という世界最速のスピード*2で行える「迅速遺伝子検査システム」を開発いたしました。平成20年をめどに、今後の医療現場に求められるPoint of Care Test(POCT)*3に活用いただける、小型・全自動で迅速処理を実現するシステムの製品化を目指します。
今回開発した「迅速遺伝子検査システム」は、理化学研究所および株式会社ダナフォームとの共同開発により、SMAP法*4と呼ばれる最新の遺伝子等温増幅法を採用した、SNPs検査を全自動で行う世界初の迅速遺伝子検査システムです。微量のサンプルからDNAを抽出・増幅・検出するすべての工程を、微細な流路を形成した名刺大のディスポーザブルタイプのマイクロチップ上に組み込み、平易な操作での全自動検査を実現しました。
従来のSNPs検査では、血液や口腔内組織などの各種サンプルから、遠心分離機などを用いてDNAを抽出し、さらに反応試薬を加えるなどの調製を行い解析装置で分析する手法が一般的であり、結果を得るまでには検査技師などの専門家のオペレーションと数時間~数日の時間を必要としていました。今回の「迅速遺伝子検査システム」では、採血したそのままの血液サンプルから、全自動で迅速に検査結果が得られるため、診察室や病室のベッドサイドでの検査が可能となり、必要な時に必要な結果を短時間で出すことができるオンデマンド型の遺伝子検査を実現します。例えば、病院などで問診の最中に遺伝子のタイプを判別し、個人情報を外部に出すことなく検査結果をもとに最適な薬を選択し適切な投薬量を処方することや、抗がん剤の効果予測診断への応用など、患者の体質に応じた「テーラーメード医療」を可能にします。
富士フイルムは、プラスチック基板上に微細な流路などの構造を形成する優れた微細加工技術、流路内での液体の挙動・化学反応を制御するマイクロフリュイディクス技術*5、イメージセンサーなどの開発で培った微量成分の高感度検出技術や解析技術など、多くの独自技術を生かして本システムを開発いたしました。平成20年の夏までに、抗血栓剤として広く処方されているワルファリンの最適投与量決定検査などのアプリケーションでの実用化を目指し、製品化を進めます。さらに今後、処理の一層の迅速化、持ち運びも可能な装置の小型化と、医療現場で幅広く導入いただける低価格化を実現してまいります。
富士フイルムは、独自技術・事業を進化させ、強力に推進していくことで、医療や健康管理の進歩、そして人々のクオリティオブライフのさらなる向上に大きく貢献してまいります。
*1:遺伝子(SNPs)検査:
特定の遺伝子のわずかな差(一塩基差:Single Nucleotide Polymorphism)を調べることにより、形質(体質)の違いを調べること。薬の効き目や副作用に関連した遺伝子のタイプにより、適切な薬剤や投与量を処方したり、代謝遺伝子のタイプを調べることで個人に合わせたダイエット法を指導するなど「テーラーメード医療」や「パーソナルヘルスケア」への活用が始まっている。
*2:2007年1月31日現在、当社調べ
*3:Point of Care Test(POCT):
外来患者の診察室、病棟のベッドサイド、手術前後の緊急検査など、より現場に近い場所で行われる検査。使用されるシステムには、迅速性と専門の技師でなくても操作できる簡便性が求められる。
*4:SMAP法(Smart amplification process):
理化学研究所と(株)ダナフォームが発明した、目標とする遺伝子を増幅し一塩基の違いを検出する独自のDNA等温増幅手法。一定の温度環境で短時間に増幅できるため、一塩基の違いを正確に検出することに優れている。
*5:マイクロフリュイディクス技術:
基板上に微細な流路などを形成し、圧力や電圧などを利用して流路内の試薬やサンプルを動かし混合・反応・検出など、分析のすべてを基板上で行う技術。反応の場が小さいために装置の小型化・反応の迅速化・使用試薬量の低減など多くのメリットが期待できる。
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