メディネット、京都大と共同で急性骨髄性白血病に対する樹状細胞療法を用いた臨床研究を開始
メディネット、京都大学と急性骨髄性白血病に対する新たな治療法の確立に向け
樹状細胞療法を用いた共同臨床研究を開始
株式会社メディネットは、平成19年7月19日、国立大学法人京都大学医学部附属病院血液・腫瘍内科(京都市左京区、科長:石川 隆之)と共同で、急性骨髄性白血病に対する新たな治療プロトコルの開発を目的として、樹状細胞療法 を用いた臨床研究を開始しましたのでお知らせします。
急性骨髄性白血病(AML; Acute Myeloid Leukemia)は、白血病 の一種で、日本では成人急性白血病の約8割を占めております。適切な治療を行うことで多くのケースで寛解が期待できますが、治療が行えなかった場合には急激に病状が悪化し、数ヶ月間で死に至ることが知られています。通常、急性骨髄性白血病の治療には、まず化学療法が選択され、長期生存を目指すためには、完全寛解 に持ち込むことが前提とされています。また、化学療法のみでは治癒が困難な症例に対しては、化学療法終了後に造血幹細胞移植が行われています。しかしながら、急性骨髄性白血病患者の多くを占める高齢者においては、化学療法による完全寛解率が低い上、造血幹細胞移植については多数の症例でその治療効果に比べ副作用が大きいことから、実際に造血幹細胞移植が選択されることは多くありません。このような急性骨髄性白血病の治療の現状から、高齢者に対しては、化学療法後の新たな治療法を確立することが望まれています。
本共同臨床研究は、化学療法で一定の効果が得られた症例の中で、造血幹細胞移植が適用されず、かつ、がん細胞に特異的なたんぱく質を発現している患者様を対象として、同たんぱく質由来のがん抗原ペプチドを感作させた樹状細胞を投与し(樹状細胞ワクチン療法)、治療法の安全性と有効性を検討いたします。樹状細胞に特定のがん抗原ペプチドを感作させることで、体内でより高い特異的免疫反応を引き起こすことが期待されます。
メディネットは、本共同臨床研究において同樹状細胞加工技術をはじめ同社の保有するノウハウ、各種基礎データを提供するとともに、免疫学的解析の一部を行う役割を担っています。
本共同臨床研究により、本治療法の安全性、有効性が確認されれば、現在、実質的に治療選択肢のない患者様に対しても、QOL(Quality of Life)を維持しながら生存期間を延長できる新たな治療プロトコルが確立されるとともに、急性骨髄性白血病の予後の改善につながるものと期待しております。
以 上
・樹状細胞療法
樹状細胞を用いた免疫細胞療法で、体内でがん細胞を特異的に攻撃するTリンパ球を誘導し、攻撃させる治療方法。樹状細胞は、がん細胞に由来するたんぱく質を貪食し、それをがん抗原としてTリンパ球に提示することにより、がん細胞を特異的に攻撃するTリンパ球を誘導する働きをする。がん抗原ペプチドまたは患者自身のがん組織等を利用し、あらかじめがん抗原を認識させた樹状細胞を投与する樹状細胞ワクチン療法と、貪食作用を保持した、言わば未熟な樹状細胞をがん病巣に直接注入する樹状細胞腫瘍内局注療法などがあり、他の免疫細胞療法と同様に、患者への身体の負担は非常に軽微である。
本臨床研究では、CTL誘導能の増強が期待できるゾレドロネートで刺激した樹状細胞を用いる。
・白血病
白血球などの血液細胞のもとになる造血細胞ががん化する病気。その発症形態から、主に急性骨髄性白血病(AML; Acute Myeloid Leukemia)、急性リンパ性白血病(ALL; Acute Lymphoblastic Leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML; Chronic Myeloid Leukemia)、慢性リンパ性白血病(CLL; Chronic Lymphocytic Leukemia)の4つに分けられる。主に高齢者に発症するが、成人で発症し命を落とすケースもある。
・「がん診療レジデントマニュアル 第4版」161ページ(国立がんセンター内科レジデント 編;医学書院)
・寛解
病状が消失または好転する状態。
・完全寛解
骨髄での白血病細胞の比率が5%未満、末梢血中の白血病細胞が消失し、白血病に伴う病状が消失した状態。
・造血幹細胞移植
正常に機能しなくなった造血幹細胞(血液細胞のおおもとになる細胞)を、他人または自己の正常な造血幹細胞で置き換え、正常な造血を促す治療法。他人の造血幹細胞を移植する場合は、白血球の型が適合する細胞を移植する必要がある。化学療法単独では治癒が困難で、かつ、移植前に骨髄を破壊するなどの処置が必要となるため、比較的全身状態のよい患者に適用される。
・がん抗原ペプチド
がん細胞に特異的に発現するたんぱく質中に含まれる、がん細胞の目印として免疫細胞の標的となる数個~十数個程度のアミノ酸。
・免疫学的解析
本治療の前後における患者体内における免疫応答の変化をモニタリングすることで得られるデータの解析。