中国電力、発電所取水路への付着生物の幼生検出キットを開発
発電所取水路への付着生物の幼生検出キット開発について
当社は,火力・原子力発電所の取水路に付着するフジツボなどの付着生物対策の一環として,株式会社セシルリサーチ(兵庫県姫路市,社長:山下桂司)と共同で,アカフジツボ,ムラサキイガイの付着期幼生を簡便,迅速,高感度に検出できるキットを開発しました。
発電所の取水路にフジツボなどの生物が付着すると,取水量の低下や熱交換率の低下など,設備の性能・信頼性低下を招く恐れがあり,また,取り除いた貝等の大量の廃棄物についても,臭いの発生や処理コストの問題があります。しかし,現状では,生物付着を完全に防止することは困難で,防汚塗料の塗布や取水路内への塩素注入,取水路清掃ロボットの運用等により付着量を抑えています。
こうした付着生物の代表的種類であるアカフジツボ,ムラサキイガイは,1ミリ以下のプランクトンの状態で浮遊し,付着した場所で成体となります。このため,付着直前の幼生の段階で,取水路への流入や周辺海域での発生を検出できれば,集中的な塩素注入や清掃ロボット運用等の効率的な対策が可能になります。
従来,幼生の段階で種類を検出することは専門家でも困難でしたが,今回開発した検出キットは,専門家でなくても簡便,迅速,高感度に,幼生の種類を検出できることから,効率的な対策を可能にするものです。
また,アカフジツボ,ムラサキイガイは,カキと付着場所が競合することから,カキ養殖においても幼生の検出ニーズは高く,今後,こうした分野での活用も期待できると考えています。
なお,この検出キットと関連商品は,平成19年度中に,和光純薬工業株式会社(大阪府大阪市,社長:池添太)から,販売される予定です。
○ 検出技術の概要
開発した検出技術は,妊娠検査薬など医療分野で普及しているものと同様の抗体を用いた手法で,アカフジツボ,ムラサキイガイが持つ特定のタンパク質と結合する抗体を用い,結合時に表れる赤いラインにより試料中の幼生の有無を識別するものです。
これらの技術は,平成15年度に抗体を作成し,16~18年度にキット化の検討と実際に採取したサンプルによる検証試験を行って開発しました.。
○ 検出技術の特徴
1. 専門家でなくても簡便・迅速・高感度な検出が可能
採取サンプルからの抽出液を滴下するだけで,約10分で検出できます。
2. 装置なしで検出可能
顕微鏡などの装置が必要ないため,野外でも検出できます。
3. 誤検出の可能性がない
他種プランクトンには反応しないため,誤検出の可能性がありません。
4. 付着直前の幼生に強く反応
検出対象種の内,付着直前の幼生に強く反応し,それ以外には反応が弱いことから,付着に寄与する幼生だけをより直接的に検出できます。
以上
(参考) *関連資料参照
図1:検出キットの操作手順,図2:アカフジツボについて,図3:ムラサキイガイについて