富士経済、国内エネルギー関連システム9分野91品目の市場調査結果を発表
シリコン太陽電池の2012年度予測 3,400億円超、06年度比90%増
08年度以降のシリコン供給が需要に対応、省シリコン新技術開発で
国内エネルギー関連システム9分野91品目市場を調査
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 03-3664-5811)は、07年4月から6月にかけて、新エネルギーシステムの実用化が急速に進み、注目される国内エネルギー関連機器9分野91品目についてその動向調査を行なった。その結果を調査報告書「2007電力・エネルギーシステム新市場 上・下」2巻にまとめた。
「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」の対象となる新エネルギーのうち、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、小水力発電の動向を詳細に分析した結果を上巻、エネルギー関連91品目の市場を俯瞰した報告を下巻にまとめた。
エネルギーの生産・消費全般の市場から主要91品目を対象に選び、自家発電システム、新エネルギーシステム、電力貯蔵・電源品質対策機器、パワーエレクトロニクス、照明機器、熱源機器、空調・冷暖房機器、厨房関連機器、そして新燃料の9分野に分けて分析を行なった。
<今後の成長が注目される市場>
調査の対象に選んだ91品目の内から今後の成長性に注目したものをあげる。
●太陽電池(太陽光発電)とバイオマス発電
これまで新エネルギー市場は、住宅を中心に普及し続ける太陽電池(太陽光発電)が牽引してきた。太陽電池(太陽光発電)は、日本企業が世界市場の約50%のシェアを占めていると見られる。短期間で急拡大したために原料のシリコンの安定供給に問題を引き起こしているが、省シリコン技術の開発も進んでいる。バイオマス発電は低コストの原料の安定調達に課題を抱えているが、06年にはバイオマスニッポン総合戦略を見直して施策強化が図られた。原油高騰も影響し、06年度には大型設備稼働による一時的な特需が発生した。
[07~08年度の見通し]
太陽電池(太陽光発電)は、需要分野が公共、産業分野へも広がり、海外需要の増加も想定されるためメーカーでは積極的な設備投資を行っており、高成長が予想される。バイオマス発電は、メタン発酵発電や熱分解ガス化発電などの新技術の普及が見込まれ、10年度までは緩やかな市場拡大が期待される。また食品リサイクル法により、チェーン店を始め川下産業の対策強化による市場拡大も想定される。新規技術による小規模プラントへの需要が創出され、拡大が予想される。
[10~15年度への見通し]
太陽電池(太陽光発電)、バイオマス発電の成長が引き続き新エネルギー市場を牽引すると予測する。太陽電池(太陽光発電)は、国内外のメーカーが設備を増強し、10年度以降は低コスト化が進むと予想される。また、産業施設への導入が拡大して設備容量の増加も推測される。
バイオマス発電は、10年度以降、発電システムの信頼性向上や環境対策の本格化により、各産業界の大手企業を中心とした導入によりシステムの大型化が予想される。また、公共プラント(廃棄物発電/下水処理場)の積極投資や、燃料電池(MCFC/SOFC)の実証目的での導入など幅広い分野への導入拡大が期待され、07年以降、年平均5%程度の伸びにより15年度には200MW程度の新規導入量が予想される。
●シリコン太陽電池(太陽光発電)
2006年度 1,795億円 2012年度(予測) 3,402億円 06年度比189.5%
10年度までの市場は、年率20%以上で伸び、その後は12年度に向けて安定した伸びとなる。シリコン系太陽電池の市場が中心で、単結晶シリコン(12年度1,196億円)・多結晶シリコン(同1,817億円)太陽電池が市場を二分すると見る。多結晶シリコン太陽電池は、発電効率とコストのバランスが評価され、単結晶に比べ市場の伸びが大きくなる。さらに中期的には、薄膜系シリコン太陽電池が大幅な拡大(380億円06年度比19倍)を示す。12年度以降の長期的予想では、有機物系・化合物系太陽電池が大きく伸びると見られる。06年度の生産容量シェアは、シャープが単結晶シリコンでは51%、多結晶シリコンも64%でトップ、薄膜系シリコンは、カネカが61%を占めてトップとなった。
●家庭用エコキュート
2006年度 1,150億円 2012年度(予測) 2,060億円 06年度比179.1%
電力会社やメーカーが総称する家庭用自然冷媒ヒートポンプ式給湯器を対象とする。フロンガス冷媒に代えて、環境対応に優れたCO2を冷媒に用いた技術で、ランニングコスト面が優れた製品として急速に拡大している。オール電化の普及に伴い、価格競争も激化している。ヒートポンプユニットと貯湯タンクを一体生産でき、全国の設置工事業者網を持つメーカーが実績を伸ばしている。エコキュート以外のオール電化機器ともセット提案できるため、今後も大幅に市場シェアの拡大が見込まれる。06年度のトップメーカーシェアは、松下電器産業が27%、次いで三菱電機となった。
●バイオエタノール合成燃料(ETBE)
2006年度実績なし 07年度見込 16億円 2012年度(予測) 1,235億円(07年度比77倍)
フランス、ブラジルなどよりバイオエタノールを輸入、国内でETBEに合成して自動車用混合ガソリンとして流通させる。既存のガソリンスタンドを流用できるのでバイオ燃料として有望視されて07年4月から販売が開始されている。ガソリンにETBEを7%添加したE3バイオガソリンとして使用する。現行税法ではガソリン扱いのため差額を通産省・石油連盟が負担して普及を図るシナリオを進めている。計画通りに進めば08年度から10年度にかけて急激に市場が成長し、その後安定した市場推移をたどると予測される。
<調査結果の概要>
●全体市場の動向(9分野91品目)
今後の市場成長と12年度の市場規模予測から、シリコン系太陽電池や燃料電池、バイオマス発電、ハイブリッド自動車向け大型二次電池、家庭用オール電化機器、各種ガスエンジンが有望と考えられる。これらは06年度から12年度までの市場成長率が全て30%を超えており、12年度時点の市場規模が軒並み200億円を超えると予測される。
また、12年度の市場では大規模ガスエンジン、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、家庭用エコキュート、家庭用IHクッキングヒーターがそれぞれ1,000億円を突破すると予測する。
新エネルギーシステムは、10年頃から燃料電池が普及期に入ると予想され、市場拡大の先陣を担う。また、06年度の段階で既に一定の市場規模にある太陽電池(太陽光発電)もシリコン不足の解消により、さらに市場を拡大すると予測する。
また、新燃料のバイオエタノール合成燃料(ETBE)は自動車用燃料として10年度には大幅な拡大が見込まれるが、税法や助成金の動向が市場に大きく影響を与える。
●主な分野別動向
(1)自家発電システム
2006年度 1,712億円 2012年度(予測) 2,888億円 06年度比168.7%
ガスエンジンが拡大し、ディーゼルエンジンやガスタービンは縮小する。家庭用及び業務用のマイクロガスエンジンは、競合する家庭用燃料電池など新技術製品の普及度合いに影響を受けつつ拡大すると考えられる。
(2)新エネルギーシステム
1)太陽光発電(太陽電池)・風力発電システム
2006年度 2,788億円 2012年度(予測) 4,046億円 06年度比145.1%
自然エネルギー関連では、シリコン系太陽電池のシェアが圧倒的に高く、この傾向は12年まで続くと見る。12年度以降、薄膜系シリコン太陽電池が市場を伸ばし、シリコンを使用しない化合物系・有機物系太陽電池にも展開していく見通しである。風力発電では、2,000kW以上の大規模風力発電の実績が伸びており、将来に亘っても一定数のシェアを占めると見られる。
2)バイオマス発電システム
2006年度 2,022億円 2012年度(予測) 3,040億円 06年度比150.3%
バイオマスプラント建設が市場に大きく影響を与える。06年度は大規模直接燃料発電プラントの導入が相次いだため、前年度比180.5%と他年度に比べて市場が大きく伸びた。12年度までは、直接燃焼発電からバイオガス化発電・メタン発酵ガス化発電へシフトする。
(3)照明機器(業務用)
2006年度 115億円 2012年度(予測) 138億円 06年度比120.0%
現在の市場はHf(高周波蛍光ランプ方式)照明が中心である。10年度以降LED照明が本格的に市場を形成し始めると見込まれる。LED照明の市場形成当初は、イニシャルコストに多少の問題が生じる可能性があるものの、導入先は施設全般の照明と非常にポテンシャルの高い市場であるため、大きな伸びが期待できる。
(4)熱源機器
2006年度 3,397億円 2012年度(予測) 3,971億円 06年度比116.9%
家庭用では、エコキュートがマーケット拡大による機器本体のコストダウンおよび設置工事費の低下が進み、更に拡大すると見られる。ガス給湯器、石油給湯器においても高効率機器への買い替えが進んでいるが、エコキュートへの移行を食い止めるには至らない。一方、業務用では給湯量が大きいため大型貯湯槽を必要とするエコキュートはイニシャルコスト面に問題がありあまり普及が進んでいない。
(5)空調・冷暖房機器
2006年度 1兆948億円 2012年度(予測) 1兆910億円 06年度比99.7%
家庭用ではルームエアコンの市場が既に成熟しており、単価の高い高付加価値製品の売れ行きも鈍化し始めている。オール電化の進展に伴い、電気式床暖房や蓄熱暖房が伸びている。業務用ではガスヒートポンプや灯油ヒートポンプ(KHP)といったエンジン式の機器が、燃料高の影響を受けて苦戦している。冷凍機も燃料高の影響を受けて、吸収式冷凍機からコストパフォーマンスの向上が著しいターボ冷凍機への代替が進んでいる。
(6)厨房関連機器
2006年度 2,502億円 2012年度(予測) 2,833億円 06年度比113.2%
家庭用ではIHクッキングヒーターが急速に拡大している。単体での販売に加えオール電化をコンセプトとしたエコキュートとのセット販売が拡大している。今後、新築・既築ともガスコンロからの代替が進むと見られる。
(7)新燃料
2006年度 185億円 2012年度(予測) 1,527億円 06年度比825.4%
新燃料市場は、全体的には微増傾向であるが、ETBEのみは急激な伸びを示すことが予想される。
ETBEが自動車用燃料として使用されるためである。ETBEは自動車用であるため需要家層が広く、単価も高い。導入初期段階であるため価格は既存のレギュラーガソリンと同一価格に設定されているが、差額分は経済産業省・石油連盟が負担している。将来的に税法改正などがあれば、拡大幅は低下すると思われる。
<調査対象・調査方法・調査期間>
(※ 関連資料を参照してください。)
以上
資料タイトル:「2007 電力・エネルギーシステム新市場 上・下」巻
体 裁:A4判 上巻337頁 下巻253頁
価 格:95,000円(税込み99,750円)
上下セット価格(CD-ROM付):190,000円(税込み199,500円)
調査・編集:富士経済 東京マーケティング本部 第四事業部
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この情報はホームページでもご覧いただけます。
URL:http://www.group.fuji-keizai.co.jp/
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(※ 調査対象・調査方法・調査期間、目次は関連資料を参照してください。)