JFEスチール、超大型コンテナ船向け高強度鋼板が船体用鋼材として製造承認を取得
超大型コンテナ船用降伏応力460MPa級高強度鋼板の共同開発について
当社は、株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(以下、IHIMU)と共同で、超大型コンテナ船用に降伏応力460MPa級の高強度鋼板の開発を進めていましたが、このほど開発を完了し、財団法人日本海事協会(以下、日本海事協会)より船体用鋼材としての製造法承認を取得しました。
今回開発した鋼板は、従来から使用されている降伏応力390Mpa級の鋼板と比べ、降伏強度が大幅に(約18%)向上するため、大型化が進むコンテナ船を軽量化し、輸送エネルギーの低減を実現します。又、本鋼板は高強度でありながら高い靭性と溶接性を兼ね備えています
大型コンテナ船は貨物倉に大きな開口を有するため、デッキまわりの強度を確保するために、ハッチサイドコーミングやアッパーデッキに高強度の厚肉鋼板を使用しています(注1)。近年、海上輸送量の増大により、輸送の効率化のためのコンテナ船の大型化が進み、建造に使用される鋼板の厚肉化が、船舶の重量の低減、耐久性の確保、建造時の作業性改善などの障害となってきました。今回開発した高強度鋼板は、超大型コンテナ船用鋼板の厚肉化を抑えて船舶を軽量化し、エネルギー効率の改善と安全性の向上、建造コストの削減に寄与します。
一般的に、鋼板は、厚肉・高強度となるほど靭性(注2)および溶接性は低下します。当社は、この問題を、世界最高速の冷却速度を有する高精度水冷装置“Super-OLAC”(注3)および溶接性改善技術“JFE EWEL”(注4)を駆使し解決しました。この鋼板は、降伏強度390MPa級の鋼板と比べ、降伏強度は大きく向上すると同時に、靭性ならびに溶接性も同等以上となる優れた性能を有しています。
この鋼板の実船への適用については、現在、実物大構造モデルによる破壊実験を含めた構造安全性の詳細検討をIHIMUとJFEスチールにて共同で進めております。
JFEスチールは、本鋼板を船舶用に生産・供給することにより、地球環境の改善に貢献してまいります。また、今回開発した鋼板を新たな分野でも活用してまいります。
(注1)大型コンテナ船に高強度厚肉鋼板が使用される部位
(※ 関連資料を参照してください。)
(注2)靱性
材料の粘り強さ。材料の中で亀裂が発生しにくく、かつ伝播しにくい性質。
(注3)Super-OLAC
理論限界相当の高冷却速度、高精度冷却機能を有するオンライン加速冷却設備。JFEスチールのナンバーワン先端技術であり、JFEの三つの厚板工場全てに導入済。平成14年度 大河内記念会技術賞、岩谷直冶記念賞を受賞。
●Super-OLAC設備外観
(※ 関連資料を参照してください。)
(注4)JFE EWEL
鋼構造物の溶接組立を効率的に行うために施す大入熱溶接の、継手熱影響部の靱性劣化を抑制する技術。
(※ 関連資料を参照してください。)
>関連情報(製品情報>厚板)
http://www.jfe-steel.co.jp/products/atuita/index.html
>関連情報(製品情報>造船)
http://www.jfe-steel.co.jp/products/shipbuilding/index.html
(※ 注1)大型コンテナ船に高強度厚肉鋼板が使用される部位などは関連資料を参照してください。)